よっしん。たくさんの年賀状。嬉しいですね。
私がかかわった教え子たちも二十歳を超え「大学合格しました」。「就職しました」。「結婚しました」。「家族が増えました」。など嬉しい報告つきの年賀状が届くようになりました。
また、保護者の方から頂く年賀状には感謝の言葉が書かれてあり、何年たっても私のことを覚えていてくださって、感謝して下さることはとても嬉しいことだと思います。
私にも、40年近くずっと年賀状を送り続けているたった一人の恩師がいます。
その先生は小学校1年生と2年生の時の担任の先生で、田中先生といいます。
田中先生はもう80歳をとうに超えておられると思います。私が田舎を出てから1度もお会いしていませんが、母に聞くところによると、とてもお元気とのこと嬉しい限りです。
なぜ、小学校の低学年の時の先生をいまだに忘れず感謝の気持ちで年賀状を書くのかというと、田中先生は私を特別扱いしてくださったのです。特別扱いというとよい意味にとられないかも知れませんが、しんどい思いをしている子どもにとって、たった一つの特別扱いが生きる勇気につながることがあるのです。
田中先生は毎年、3学期の始業式の日。下校前に私を呼び出して、そっとお年玉を下さいました。
私は両親からもお年玉をもらったことがなく、お年玉をくれるような親戚もいない私は、その田中先生から頂くお年玉が唯一のお年玉だったのです。
その頃、3学期の始めに、学校に銀行員が来て、教室で貯金をしていました。
みんなが貯金するお金はお正月にもらうお年玉でした。
級友たちはその額を競い合っていました。
しかし、お年玉をもらえない私は貯金をすることができなかったのです。
そんな時でした。田中先生が私にそっとお年玉を下さるようになったのです。
私は田中先生から頂くそのお年玉がとてもうれしかったのをよく覚えています。
なぜならそのお金で貯金をすることができるようになったからです。
額は他の子たちと比べるとわずかです。しかし、他の子と同じように貯金ができることが本当に嬉しかったのです。
何十年たってもあの時の感謝の気持ちは忘れられません。
田中先生から毎年届く年賀状を拝見しながら
「先生。今年もお元気でいてくださいね。私は今、とても幸せです。先生への感謝の気持ちはずっとずっと忘れません。先生が私にしてくださったように、しんどい思いをしている子どもに、そっと特別扱いをしてあげられるそんな教師になります」。
そう語りかけています。